REPORT Vol.17

2022年 3月11日

コロナ禍だからこそ光るDMの価値 成果の秘訣は顧客に対する熱量にあり

笹嶋理恵子氏(東京個別指導学院)×田村亮子氏(フュージョン) コロナ禍でデジタル化が進む今、DMの価値はどのようなところにあるのだろうか。第34回「DM大賞」を受賞した東京個別指導学院の笹嶋理恵子氏と、制作を担当したフュージョンの田村亮子氏の対談から考える。

東京個別指導学院 マーケティング部 笹嶋理恵子氏

フュージョン 企画・推進グループ 企画・推進2部 マネージャー 田村亮子氏

顧客の課題を解決するDM 子どもの幸せを願う親心に着目

─第34回「全日本DM大賞」にて、「受験生の母子手帳DM」で、東京個別指導学院がグランプリを受賞しました。このDMを制作した制作背景について教えてください。

笹嶋:DMで既存顧客、中でもお子さんではなく保護者の方の悩みを解決し、エンゲージメントの向上に結び付けることを目的として始めました。私たちの顧客である保護者の方が最も悩んでいることは何なのかを考えると、精神的にナイーブになっている受験生の子どもと、実際にコミュニケーションをとることに悩んでいる保護者が多いことに気づいたのです。入塾する一番の目的は、もちろん成績を上げることですが、その裏には「子どもに幸せになってほしい」という保護者の願いが込められています。 保護者と生徒の橋渡し役として、この悩みを解決できる手段はないかと熟考し、思いついたのが「母子手帳」という形でした。

田村:笹嶋さんから、保護者の方が生徒であるお子さんとの間で抱える悩みを解決できるようなDMをつくりたいという想いをお聞きしていました。その期待に応えるべく、何度も議論を重ねて制作に至ったのが、今回の受賞作品です。受験期における「親子のコミュニケーション」を支える役割を担う、理想形に近いものができたと思います。

─ 受賞を経て、社内でのDMに対する考え方にも変化があったのではないでしょうか。

笹嶋:今回の受賞は、社内のマーケティング活動の士気を高めることにもつながりました。自分たちが制作したDMを社外の人に評価してもらう機会はなかなかないですし、「受賞」という事実により、これまで部内で積み上げてきたことが認められたように思えて、モチベーションアップにもなりました。

第34回「全日本DM大賞」を受賞した東京個別指導学院のDM作品「受験生の母子手帳DM」。

コロナ禍の今、考えるDMの価値 顧客に情報と思いを“直接”届ける

─デジタル化に拍車のかかる、今だからこそ光るDMの価値はどこにあると思いますか。

田村:この状況下だからこそ、DMを作成したいとの声は増えています。例えば、BtoBの企業では対面での営業が難しくなり、コンタクトを取るための手段としてDMを活用しようとする動きが顕著になっています。理想はデジタルとアナログの双方を使いこなすことです。ただ人的営業の代替として考えると、温かみのある紙のコミュニケーションツールの有用性が再認識されているのだと思います。
BtoBに限らず、先行きが不透明な時代だからこそ、企業の思いをしっかり伝えることが求められている。そうしたコミュニケーションにおいて、DMは有効な手段と言えるのではないでしょうか。

笹嶋:また、意外と回覧性が高いのも特長のひとつ。デジタルだと、受信者だけが読むだけで次の情報共有につながらないことも多いですが、紙媒体は「回し読み」ができますよね。例えば、家に届いたDMを親子で共有し、家族単位で企業やサービスについての理解を深めてもらうことにもつながります。

田村:これは企業内でも同じことが言えます。企業向けのDMが、社内で若手社員から代表者の方まで回覧され、情報が隅々まで行き届くケースも多いです。このような情報の拡散力や知名度定着という面においても、DMの価値は見出せるのではないでしょうか。

─コロナ禍で再認識されたDMの強みですが、実際に社内でDM戦略に変更は変わりましたか。

笹嶋:当社では、DMをよりプッシュ媒体として位置づけるようになりました。これは、企業の思いをしっかりと伝えられるだけでなく、ターゲットに合わせたメッセージを直接届けられるというDMの特長を考慮した上でのことです。一人ひとりに合わせたコミュニケーションを“直接的に”とる方法のひとつとして、DMを重要媒体として扱うようになりました。

田村:コロナ禍だからあえてメッセージを変える、というわけではなく、普段からターゲットのインサイトを捉えてアプローチすることがDMには求められていますよね。顧客の心を繋ぎ止めておくために、企業のブランドイメージを壊さない、かつ届いたとき何か驚きのあるものを追求していかなければなりません。

心を動かす決め手は顧客を思う熱量の強さ

─改めて「全日本DM大賞」をどのように捉えていますか。

田村:なかなかクライアントと一緒につくったDMを発表する場はないので、このような機会があると、私たちの視野を拡げることにもつながりますし、他の企業がどのような取り組みをしているのかも知ることができてありがたいと思っています。

─応募する方々に、アドバイスをお願いします。

笹嶋:良いDMとは顧客の心を動かすことができるものだと思います。クリエイティブも大事ですが、それ以上に顧客の気持ちに寄り添う姿勢があるかどうかが成果につながってくると思います。

田村:これまで応募を続けてきて思うことは、DMを受け取る人たちのことをしっかり考え、苦労を重ねてつくったものが結果的に評価されるということです。しっかり相手のことを考えられた作品が、受賞できる賞なのではないかと思っています。

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