[第36回DM大賞 贈賞式直前企画]過去グランプリ入賞作品を振り返る①
第33回 金賞・グランプリ 広告主:ディノス・セシール

2022年 3月11日

第36回全日本DM大賞は、3月18日(金)にオンライン映像配信にて、各賞を発表する贈賞式を行います。
そこで、直前企画として、「【事例で学ぶ】成功するDMの極意」から過去のグランプリ入賞作品をご紹介いたします。本記事をご覧いただきながら、贈賞式配信まで今しばらくお待ちください。

贈賞式の視聴はこちら
(3月18日(金)16時00分~配信となります)

メールよりもコンバージョン率20%アップ
ジャストタイミングのDMでカタログに反応が薄い顧客にもリーチ

最新テクノロジーで自動化へ!
パーソナライズされた情報が欲しいタイミングで届くDM

広告主:ディノス・セシール 制作者:ディノス・セシール ※記事内容(会社名称等)は、受賞当時のものです。

ディノス・セシールは最新デジタル技術と、同社が得意とするカタログやハガキといった紙メディアを統合。カートを離脱した顧客へ最短24時間以内に送付するDMや、自動化してコーディネート提案などを行うDMを展開した。

POINT1
カート離脱した顧客に送付した“カート落ちDM”。最新技術の活用で、顧客アプローチのリードタイムを極限まで短くした。

POINT2
商品は3点紹介する仕様。カートに1点しか入っていなかった場合は、事前に設定した2商品を加えて3商品紹介した。

左から、ディノス・セシールの佐々木拓也氏、石川森生氏

戦略性

“カート落ちDM”と“小冊子DM”送付までのリードタイムを最大限短縮

今回の施策は2つ。第1弾は“カート落ちDM”、第2弾が“小冊子DM”だ。

マーケティング方針および販促企画

“カート落ちDM”は、ECと紙をリアルタイムで連携させた施策だ。ECでは、商品をカートに入れてから離脱した顧客をメールでフォローする“カート落ちメール”の配信が広く行われているが、今回は最新デジタルソリューションを使いDMで実現。

同社CECO(Chief e-Commerce Officer)である石川森生氏は、“カート落ちDM”を開発した背景について「ネットの優れている点は、コンテンツを顧客の趣味・嗜好に合わせてパーソナライズできるところですが、それ以上に重要なことが、タイミングのパーソナライズです。今回の“カート落ちDM”は、データ連携から最短24時間以内に印刷・発送を実現しました。顧客が“欲しい”と思っているときを逃さず、紙媒体で情報を提供すれば、購買に結びつく可能性は高いと考えました」と語る。

第2弾“小冊子DM”は、ファッションAI「#CBK scnnr」を活用した施策で、顧客の戦略性“カート落ちDM”と“小冊子DM”送付までのリードタイムを最大限短縮購入商品に似たアイテムを着こなしている写真をInstagramから抽出し、顧客別にパーソナライズした小冊子として発送した。「これまでも、過去に購入したアイテムに関連したコーディネート提案はメールで行っていて、反応は悪くありませんでした。今回は、それを可能な限り自動化したいと考えました」(同社EC本部 EC推進部 EC開発ユニット佐々木拓也氏)。

ターゲティング/リスティング

第1弾“カート落ちDM”は、オンラインショップのカート離脱顧客。第2弾“小冊子DM”は、ファッションアイテム購入者。

クリエイティブ

ファッションAIの導入でDM作成を自動化

“カート落ちDM”については、Webでカートに入れた商品がDMで届くことに対して、従来の「カート落ちメール」に比べて抵抗を覚える顧客がいる可能性も考慮し、オファー部分は控えめのコピーにした。「カートを離脱した直後に“カート落ちDM”が届くというのは、顧客にとっては、ずっと見られているような、ちょっと気持ち悪いと思われる可能性も否定できませんので“あくまでオススメの商品ですよ”という感じの見せ方・伝え方を心掛けました」(石川氏)。

商品は3点紹介する仕様としたが、カートに1点しか入っていなかった場合は、事前に設定した2商品を加えて、3商品は必ず紹介した。一方“小冊子DM”は、表紙および裏表紙を合わせて合計8ページ。表紙には顧客が購入したアイテムの写真と顧客名を掲載。中のページにはInstagramの一般投稿写真から、購入商品に類似したアイテムを着こなしている写真を、ファッションAIを採用することによって抽出し掲載した。「従来のメールによるコーディネート提案は、人力に頼っていた部分が多かったため、顧客のすべての購入アイテムに対する商品提案は、作業量を考えると不可能でした。今回のDMは最新のデジタルテクノロジーを使って自動化に成功しました」(佐々木氏)。

POINT3
中ページには、ファッションAI「#CBKs c n n r」を活用して、購入商品に似たアイテムを着こなしている写真をInstagramから抽出して掲載した。

POINT4
“ 小冊子DM”の表紙には、顧客の購入商品と顧客名を記載。「あなただけのカタログ」という価値を伝えた。

実施効果

コンバージョン率10~20%アップメールより“顧客体験”に強く影響

“カート落ちDM”は、カート落ちメールのみを送った顧客との比較において、DMとメールの両方を送った顧客のほうが、コンバージョン率が約20%高くなった。

一方“小冊子DM”は、カタログに対するロイヤルティが上がりづらいWebの顧客層のレスポンスが約10%アップするという成果を出した。「紙のカタログを送ってもなかなか反応しない顧客が、今回の“小冊子DM”には反応してくれました。当社のネット受注の比率は年々アップしていますが、今でもチャネルとしてのカタログを重要視しています。今回の施策で、これまでカタログへの関心が薄かった顧客も“カタログって面白い”と感じてくれるようになればと思っています。DMは、アイデア次第でカタログへのブリッジとなり得ることが実証されたのではないかと考えています」(石川氏)

佐々木氏はDMやカタログといった紙媒体の特質について「パーソナライズされた紙媒体は、パーソナライズされたメールに比べて、より顧客の“体験”に強く影響を与えます」と話す。今後は、販売促進だけでなく、購入後のフォローにも活用できるDMを開発していく考えだ。

POINT5
今回のものと同様にオンデマンドプリンタで出力し、同じく表紙に顧客名と購入商品を配した小冊子DM。内容については自社で所有するモデルカット等で構成。比較するとファッションAIを活用したほうが、コーディネートのバラエティが豊富な紙面に仕上がっている。

POINT6
裏表紙には今回の小冊子D M掲載商品の購入に使用できる割引クーポンも掲載。

審査委員講評

今回のグランプリに輝いたディノスの2つの施策は、どちらも作品の裏側にある戦略やテクノロジーが素晴らしいものでした。Webと連動して迅速にパーソナライズされており、誰に、どのようなタイミングと内容で送付されたDMなのかを理解することで、本作品の秀逸さがわかるはずです。

恩藏直人

もし「DMの歴史」という教科書があったら、年表の2018年のところにはこの仕事が書かれるでしょう。「アナログだったものをデジタル化する」という従来のアプローチを超えて「デジタルだったものをアナログ化する」という挑戦をテクノロジーで実現した、DMの未来を指し示した仕事だと思います。

木村健太郎

個々のお客さま向けに内容が完全にカスタマイズされ、特にカート落ちDMは顧客行動分析に基づく戦略的な「タイミング」でのお届け。今後のDM進化はタイミングの高度化が軸になる予感がしました。コーディネート提案カタログも、お客さまごとに別物とは信じられない出来です。

大角聡

DM診断

ここが秀逸!

DMにデジタルマーケティング的運用をうまく取り入れた。“カート落ちDM”はECのカート落ち商品へのリマインドを、従来のメールではなくDMで24時間以内に発送した、タイミングのパーソナライズを実現するシステム構築に成功したところが非常に大きなポイント。“小冊子DM”は購買履歴のデータを基に、顧客一人ひとりの好みに合ったアイテムを提案するカタログを制作し、発送。その過程にはAIも利用している。オンデマンドのバリアブル印刷技術を使い、商品提案のパーソナライズ化を目指した。海外では本流になりつつある通販業界でのパーソナライズカタログを日本で導入した最先端の事例。DMの未来が今回の作品に表現されている。

出典:株式会社宣伝会議、日本郵便株式会社 (2019) 【事例で学ぶ】成功するDMの極意 全日本DM大賞年鑑2019

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