「デジタル×DM」は、どのように実践するべきか?

近年デジタルマーケターが向き合うマーケット環境では、“デジタル×アナログの有用性”が広がりを見せつつある。とはいえマーケターのなかには“いざ実践!”と意気込んではみたものの、「具体的にどう取り組めばよいのか?」と二の足を踏む方も多いと聞く。今回は、DM(ダイレクトメール)への造詣が深く、企業のマーケティング戦略立案や営業支援を手掛ける吉川景博氏と、数々の講演や執筆活動を通じてDM活用の普及に努める椎名昌彦氏に、“実践に向けての“最初の一歩”について解説いただいた。

「デジタル×DM」の最新トレンドを知っておく

クリエイティブのアイデア勝負から、デジタル視点のDMヘ。

椎名 私が審査員を務めている全日本DM大賞の近年の事例でいうと、DX化といいますか、デジタル化。デジタルデータがDMに活用されてきた、という部分がポイントだと思います。具体的にいうと個人情報を使った形、いわゆるパーソナライズですよね。それこそ以前は名前をパーソナライズするだけだったのが、ターゲットの志向や購買履歴などからアプローチする商品を切り替えたり、クリエイティブのメッセージを変えたり、といった点が非常に顕著になっています。

例えば、DINOS CORPORATIONさまの「カート落ちDM」という施策があり、ECサイトで商品をカートに入れてから離脱するとフラグが立ち、そのお客さまへ最短24時間以内にDMが発送されるというものです。要するにホットなタイミングを逃さず、お客さまが欲しいタイミングでDMが届く。いわば“タイミングのパーソナライズ”ができるようになってきました。全日本DM大賞のデジタル×DMの活用事例をみると、過去とは別次元のレベルでパワーアップしていますね。

一般社団法人 日本ダイレクトメール協会 専務理事
椎名 昌彦氏

フュージョン株式会社
アカウントリレーショングループ
エグゼクティブマーケティングディレクター
吉川 景博氏

吉川 私も全日本DM大賞の審査を行っていますが、BtoBのDMも最近は増えつつあります。コロナ禍の影響もあり営業で外に出歩けない分、非常に多くなっています。同じような理由で新規顧客の獲得も難しくなっていますから、既存顧客をどうにかしよう、という点に注力している傾向がありますね。既存顧客のリストをもう一度見直しながら、そこに細かくアプローチする、そのようなパーソナライズの事例がすごく増えたと思います。

椎名 以前のDMは「DMを送り、商品を売る」で完結していましたが、近年はデジタルプラットフォームに誘導するための手段にもなっています。DM単体だけで完結するのではなく「DMを送り、Webに誘導し、そこで具体的に情報を伝える」という仕組み。デジタルとDMが融合し、一体型で行われる、という形もトレンドになっています。

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