「デジタル×DM」は、どうして成功するのか?

DX、OMO、A.I.など、様変わりするマーケット環境において、デジタルに傾注するあまり多くの課題に直面していないだろうか。そんな時代にこそ着目したい“デジタル×アナログの有用性”について、30年以上の歴史がある「全日本DM大賞」にて審査員を務める奥谷孝司氏と、主催社である日本郵便株式会社の松本俊仁が“DM(ダイレクトメール)の効きどころ”を解説。審査する立場、主催する立場の両面から見えてくる成功へのポイント、そして課題の解決策とは?

1st Point 全日本DM大賞 受賞作品にみる学ぶべきポイント

受賞作品は、デジタルとの組み合わせ方が評価されつつある。

奥谷 審査を通じて非常に面白いと感じているのは、デジタルとDMが融合してきたこと。しっかりとしたデータ分析を行い、それに基づきDMで体験づくりをしているところが、すごくいいなと。以前まではクリエイティブの面白さ、ここに依存していたのですが、それが変化していると思いますね。

松本 「デジタルからDMへ」という形もあるけれど、「DMがデジタルへ」つながっていくという、両方のやり方があってもいいですよね。

オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員 COCO(Chief Omni-Channel Officer)
株式会社顧客時間 共同CEO 取締役
奥谷 孝司氏

日本郵便株式会社
郵便・物流営業部
担当部長
松本 俊仁

奥谷 デジタルとDM、バラバラでは難しいと言いますか。やっぱり「DM with デジタル」という形で実践していくと、効果を生み出せる気がします。

松本 デジタルとアナログの両方を上手く組み合わせて、そこから体験のリッチ化につなげていく。これが実践できたら、非常にいいコミュニケーションになりますよね。

全日本DM大賞 受賞作品の一例

ECサイトデータにA.I.を組み合わせて顧客単位の購買確率を予測。ターゲティング精度を高めたサンプル品の同梱DMを送付。

ECサイトで商品をカートに入れてから離脱した顧客に、最短24時間以内でDMを印刷・発送。コンバージョン率は約20%アップ。※出典:DM DIGEST BOOK 2019 第33回全日本DM大賞(日本郵便)

商品を模した原寸大DMとe-mailを組み合わせたスキームで各効果を実証実験で測定。結果、DM単体での接触の方が行動を促す傾向があり、影響力が長期的に持続。

過去施策の顧客データを活用し、常連客に予めスタンプが押された「えこひいきDM」を実施。加えて、コロナ禍でのテイクアウト強化施策などを実施。

DMで、届かなかった層へリーチ。

奥谷 e-mailだけでは、どうしても開封率が低下してしまう。おそらくデジタルマーケターは実感されているのではないかと。ある会社の調査結果でも、e-mailでリーチできるのは一般的に6~10%程度だと言われています。私自身も意識してe-mailを見ているか、と問われると(笑)。

松本 やっぱり、デジタルだけではちょっと体験不足。行動喚起率の高いD Mと融合させるということが大事ではないかと思いますね。DINOS CORPORATIONさまの受賞事例でも、DMを送らなかった顧客群と比べたらコンバージョン率が約20%アップとのことです。DMで、いかに生活者の背中をひと押しできたかということですね。

DMを実践するには、特性を知っておくことが大切。

奥谷 私の場合、郵便受けに入っているDMは必ず手に取りますね。そういう意味で、開封率も認知も高いのではないかと。さらに、クリエイティブで形や手触りなど五感に訴えることができれば、特別感も醸成できますよね。

松本 最近は、むしろ受け取り手で若い方々のほうが心が動くみたいなことも。結構大切に取っておいてくれるようです。

奥谷 昔、小売業が出していたチラシとかカタログを、私も若い頃は大事に取っていましたが、そういうものに近い感覚があると思います。やはり保有効果ですよね。

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