REPORT Vol.13

ソーシャルメディア時代に注目すべきDMの「リアル」と「シェア」の可能性

「第33回 全日本DM大賞」で最終審査委員を務めていただくアジャイルメディア・ネットワークの徳力 基彦氏。ソーシャルメディアを中心としたデジタルマーケティングに精通している徳力氏だからこそ見えた、ダイレクトメールの可能性とは?

「デジタルシフトしたコミュニケーションでの『リアル』の価値」

「電子メールに比べて、紙のダイレクトメールは送付物の作成費用も郵便代もかかるしリスクが高い。」

そんな風に考えている人は少なくはないのではないでしょうか? 実は恥ずかしながら私も2年前に全日本DM大賞の審査員の機会を頂くまで、そのように考えてしまっていました。

20年前には企業から顧客への連絡手段と言えば郵便か電話か訪問かぐらいの選択肢が現実的だったのに対し、今や電子メールはもちろん、LINEのようなメッセンジャーをはじめTwitterやFacebook、Instagramなどのソーシャルメディア、さらにはスマホアプリなどたくさんのコミュニケーション手段が選べるようになりました。さらに多くのマーケティング施策がスマホ中心に実施されるようになってきた結果、顧客とのコミュニケーション手段はどんどんデジタル中心へとシフトしてきているため、相対的に郵便やDMの印象が薄れるのは当然と言えば当然でしょう。

ただ、「企業から顧客に対するコミュニケーションの選択肢」として考えると、実は話が少し変わってきます。

ポイントは二つあります。まず注目すべきは「リアル」ならではの価値です。顧客同士のコミュニケーションの重心は、明らかにアナログからデジタルにシフトしました。しかしその過程でデジタル上における情報量は爆発的に増えており、企業から顧客へのコミュニケーションは無視されることが増えています。企業のメルマガの開封率はどんどん下がり続けていると言われていますし、ソーシャルメディアの企業公式アカウントもちょっと宣伝メッセージが増えるとブロックされる確率が上がります。


「10年間の感謝を込めたあなただけのケータイアルバム」
【広告主】ソフトバンク 【制作者】トッパンフォームズ

そんな中で企業が本当に大事な顧客に大事なメッセージを伝えたい場合、DMは改めて見直されるべき手段であると言えます。

もちろん、それはいわゆる従来のDM的なDMを送り続けていれば良いという話ではありません。
昨年(第32回)の全日本DM大賞でグランプリに輝いたソフトバンクのケータイアルバムは、10年間の顧客の携帯電話端末の思い出をアルバムにすることでDMを顧客への感謝を表現する手段に変えました。


「~アドボカシーマーケティングでDMがギフトへ!~
ロイヤリティを直感できる『Give&Given DM』でピンチがチャンスに大逆転!」
【広告主】ディセンシア 【制作者】ダイレクトマーケティングゼロ

一昨年(第31回)の銀賞に輝いたディセンシアは、主力商品のリニューアルのタイミングで単純に新商品をDMとしてサンプリングするのではなく、「ギフト」として顧客に届けることでビジネス的に成果につながることを証明していました。

デジタルで簡単に大量のメッセージを送れてしまう時代だからこそ、ここぞという大事なときに大事な顧客に対してはDMというアナログな手段での「リアル」なコミュニケーションが有効であることが、数々の成功事例から証明されているように思います。

「『シェア』で生まれるリアルからデジタルへの広がり」

ソーシャルメディア時代においてもう一つ注目して頂きたいポイントは、DMが受け取り手によって拡散されるという「シェア」の可能性です。

従来のDMにおいて企業がDMに期待するのは、あくまで受け取り手一人一人の開封率であり反応率だったと思いますが、Instagramをはじめとする写真によるコミュニケーションがSNSの中心になってきたことにより、DMが受け取り手によって写真でシェアされることが自然と増加するようになってきています。
Instagramのような写真を中心としたSNSは、電子メールやWebサイトのページが投稿されることはあまりありません。スマホの画面の中のデジタルの素材がそれがどれだけ綺麗なものであっても、わざわざ写真に撮って友達にシェアしようとはあまり思われないのです。
しかし逆にポスターや新聞広告、イベント、そしてDMなどのリアルな物体はSNSでのシェアと非常に相性が良い存在です。Instagramのインフルエンサーに写真を投稿してもらおうと思った時に、多くの企業が企画するのはリアルな写真映えするイベントです。デジタル空間で話題化するために実はリアルなイベントが有効というわけです。

そういう意味でDMには、日本全国の人にデジタル空間上で話題にしてもらえる可能性があると言えます。


「受験生の心を掴み、過去10年で最大の志願者数を獲得!SNSで話題を呼んだ『桜咲くクリスマスDM』」
【広告主】学習院大学(学校法人 学習院) 【制作者】フュージョン/motto

一昨年(第31回)の全日本DM大賞で銀賞を受賞した、学習院大学の「桜咲くクリスマスDM」が象徴的な事例と言えるでしょう。

これは、クリスマスツリーのモミの木をデザインした縦長の封書を開くと、「桜の季節にお会いしましょう」というメッセージとともに桜の木が飛び出してくるというデザインのDMでした。受け取った学生がこれに感動して、家族はもちろん、多くの友達に写真をシェアしたことは想像に難くありません。


「拡散型DMによる新製品発売プロモーション」
【広告主】GAMAKATSU PTE LTD 【制作者】フジプラス

写真をSNSでシェアしてもらえると、紙のDMは受け取り手に対する一通の効果だけでなくデジタル空間上でのクチコミ効果も誘発する可能性が出てきます。
自社の顧客リストの中にいるインフルエンサーにSNS上で話題にしてもらえれば、DMは顧客一人に対するコミュニケーション手段というだけではなく、顧客の周りにいる友達へも間接的に届く可能性が見えてきているわけです。

実際、昨年(第32回)の全日本DM大賞で銀賞を受賞した釣竿メーカー「GAMAKATSU」のティザーDMは、企業側が保有している顧客リストの中からインフルエンサー的な方を厳選して送付した結果、ブログやFacebookなどで話題となり新商品の話題化や発売直後の売上に大きく貢献したと聞いています。

全日本DM大賞が30年以上続いている歴史ある企画であることから分かるように、DMという手法自体は「古い」手法と考えられがちかもしれません。
しかし実はDMという歴史ある手法を、データ分析やソーシャルメディアという新しい手法と組み合わせると全く違う可能性が見えてきます。

是非全日本DM大賞を、皆さんのDMに対する先入観を一度ゼロにして考え直す機会にしてみてください。

徳力 基彦

アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 取締役 CMO

NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月に代表取締役社長に就任し、14年3月より現職。ブログ以外にも日経MJや宣伝会議「AdverTimes」のコラム連載等、複数の執筆・講演活動を行っている。また個人でも、WOMマーケティング協議会の事例共有委員会委員長や、政府広報アドバイザーなど幅広い活動を行っており、著書に『顧客視点の企業戦略』、『アルファブロガー』などがある。

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